表面利回りとは

不動産投資において、表面利回りとは次の計算式で表せます。

表面利回り=満室時の年間賃料÷物件購入価格

不動産投資をする上で、表面利回りに騙されては行けません。次のような点に注意して表面利回りを見ましょう。

表面利回りの考え方

例えば、満室時の月額賃料収入が100万円、物件価格が1億円の場合、

表面利回り=100万円×12ヶ月÷1億円=1,200万円÷1億円=12%

が表面利回りとなります。1億円の投資額に対して、その12%である1200万円が年間収入になる想定という意味です。投資不動産の物件情報には、通常、この表面利回りが記載されています。表面利回りが高いもの程投資効率が良いものと基本的に考えられますが、この表面利回りに騙されては行けません。

表面利回りは、あくまでも現在の賃料での満室想定の賃料収入を基準としています。もし、空室率が高くなれば実質収入は減ります。また出費として、固定資産税や各種設備のメンテナンス費用、管理会社への支払い費用などの物件維持費用を引いた実質収入を元に計算した実質利回りで考える必要があります。

築年数と表面利回りの関係

築年数で見ると、築年数の古い物件程表面利回りが高くなります。新築に近いほど利回りが低くなります。

  • 設備機器の維持費
  • 築年数が古くなれば設備機器類の故障も増えて経費が多くなります。新築時の場合、エアコン、給湯器、給水ポンプの耐用年数も5~10年以上先となり、また入居者入替の際のキッチンや設備機器類を含めた室内リニューアル費用も大きな出費が少なく建物維持経費は低くなります。中古物件では、予想以上に建物、設備機器類の維持費用がかかることもあり実質利回りが低くなる場合があります。

  • 銀行ローン可能年数
  • 新築と比べて中古物件の耐用年数は、残存法定耐用年数が短くなります。銀行ローンは残存耐用年数を元にローン可能年数が決められる場合が多く、新築物件では30~35年ローンが組めても、例えばRC物件、築年数20年の場合、新築時の耐用年数47年-20年経過=25~27年ローンしか組めない銀行もあります。また、法定耐用年数で考えると、47年-20年 × 0.8=31年が築20年の残存法定耐用年数のため、銀行によっては30年程度のローンが組める場合もあります。いずれにせよ、築年数が古い物件の場合、例えば5年後に売却することを考えてその5年後にもローンが組みやすいかどうかまで含めて考える必要があります。アパートの場合、新築時の耐用年数は20年ですが、築20年経過すると耐用年数は4年となりローンを組むのが難しくなり現金で購入できる方を対象に売却することになります。

  • 残存耐用年数
  • 築年数が古いと、それだけ残存法定耐用年数が短くなります。つまり、新築と比べると将来収益を稼げる年数も短くなるの。新築と比べて建物の寿命が短いので物件価格も低くなり、表面利回りが高くなります。また、あまりに古い物件は耐震構造が現在の基準に合っていない場合もあり、注意が必要です。

建物構造と表面利回りの関係

建物構造で見ると、SRC造・RC造、S造、木造の順に表面利回りが高くなります。こちらも残存耐用年数と関係してきます。新築時の法定耐用年数は、SRC造・RC造=47年、S造=34年程度、木造(アパート・一戸建て)=20~22年になり、残存耐用年数が少なくなる程銀行ローン可能年数も短くなります。銀行ローン年数が短い場合は月額費用負担も高くなり、実質利回りは低くなります。

立地条件と表面利回りの関係

都市部の物件と地方の物件比べると、地方の物件の方が表面利回りが高くなります。

東京都内でも、エリアによって利回りが異なります。不動産投資家調査によれば、都内城南築よりも城東地区の方が利回りが高くなります(物件価格が安くなります)。

しかし、表面利回りは満室想定時の利回りとなっており、地方物件や過疎地域は空室率が高くなり一般的に実質利回りは低くなります。利回り25%=凄い物件だなと飛びついたものの、空室率が50%なら、実質利回りは半分以下になってしまいます。また、地域によって不動産管理会社に支払う標準費用が異なることにも注意する必要があります。あるエリアでは、新規入居時に入居者が支払った初月賃料がそのまま入ってくる場合もあれば、また別のエリアでは新規入居時に不動産管理会社に賃料1ヶ月分程度の広告料を支払う場合もあります。

土地価格による影響も受けます。都市部では、不動産の価格のうち、土地価格の比率が高い場合があり建物償却後も資産として土地の価値が残りますが、地方都市の場合は土地価格の比率が低く、償却後の価値も低くなります。

建物用途と表面利回りの関係

建物用途で見ると、オフィスビルや店舗物件などのテナント物件は表面利回りが高く、居住用の物件は表面利回りが低くなります。しかし、テナント物件の場合は現状入居者の賃料で計算した表面利回りが高くても一度空室になってしまうと、立地等の条件によっては入居者捜しにかなり苦戦したり、空室期間も長くなってしまいます。居住物件の場合は、空室になっても、敷金の月数を減らしたり、若干賃料を下げることにより、それほど長期間空室が続くことも少なく空室リスクは少なくなります。

また、居住物件で考えると、不動産投資家調査によれば、ワンルームタイプよりも、ファミリータイプ(2DK~3LDKなど)の方が表面利回りが0.1~0.2%ほど高くなります。

また、居住物件の場合部屋の間取りにも注目してみましょう。最近では、ワンルームタイプでもBT別(バストイレ別)に人気があったり、またファミリータイプでも小さな部屋が細切れの2DK、3DKよりも広いリビングが日当たりの良い部屋にある2LDK、3LDKの部屋の方が人気があります。居住物件を購入する際は、その物件に自分も住んでみたいと思うかどうかについても考えてみましょう。

また、居住物件の場合、賃料やそのエリアの居住者の質についても考えてみましょう。賃料が安めの設定の物件の場合、表面利回りが高くても住む層が低所得者層であったり、信用の低い人が住む場合があり、家賃滞納に悩まされる可能性もあります。

レントロールの内容もよくチェックして、物件の価値を見極めましょう。

総戸数と表面利回りの関係

一般的に、総戸数が少ない方が表面利回りは高くなります。例えば、総戸数30戸のマンションよりも総戸数10戸のマンションの方が表面利回りは高くなります。

しかし、賃貸経営の視点で見ると物件維持については、例えば総戸数10戸のマンショでも総戸数30戸のマンションでも不動産管理会社に支払う定期清掃費用はそれほど変わりません(1万5000円~20000万円)。総戸数が多いと物件管理も効率的に行うこともできます。

その物件を維持するための費用はいくらになるのかを差し引いた、実質利回りも想定しながら物件選びを行いましょう。

その他の表面利回りを高める条件

次のようなケースでは表面利回りが高くなります、と同時にリスクも大きくなりますので物件購入には注意が必要です。

  • 再建築不可
  • 物件に面する道路の条件などにより、将来建物を壊してしまうと再度建築することが不可能なものです。

  • 容積率オーバー
  • 法律上定められた容積率以上の建物が建てられている物件。利回りは高くなりますが、銀行融資が受けづらくなります。将来売却するのにも苦戦します。

  • 借地権
  • 土地が所有権でなく借地権のもの。