現地調査のチェックリスト

不動産投資で物件選びを行う際、現地調査のチェック項目について解説します。物件概要書だけでは分からないことを実際に自分の目で確かめることにより、その不動産の本当の価値を自分なりに算出してみましょう。ここでは、最寄り駅から物件まで、および物件周辺環境のチェック項目、物件外観のチェック項目、設備のチェック項目、室内のチェック項目、管理・清掃に関するチェック項目について解説します。
不動産投資に大きな失敗は許されません。なぜなら、間違った物件を購入してしまった場合、その後に融資が受けにくくなるなど将来に渡り悪影響を及ぼすこともあります。また物件を売却しようとしても、大きな時間とコストがかかってしまいます。正しい物件調査、正しい物件選びを行うことにより、不動産投資のリスクを最小限に抑えましょう。


駅から現地までの道程

 最寄り駅から現地まではタクシーを使わずに歩いて現地訪問しましょう。駅周辺、現地周辺が賑わっているかどうか、騒音や臭気の状況、スーパー、コンビニ、銀行、病院などの便利施設の状況など、自分がその物件に住んでみたいと思えるかどうかを生活者の視点に立ってチェックしましょう。

  • 駅前は賑わっているか
  • 駅からの距離
  • 物件概要書、マイソクにかかれている数字を鵜呑みにせず、自分でチェック。雪深い地域は駅から徒歩3分以内が好ましい。

  • 周辺の人通りや街灯
  • 人通りが少なく、街灯も少ない場合は夜間の安全性が低くなり女性に敬遠される可能性があります。

  • 周辺のビルテナント、居住物件の入居状況
  • 空室が目立つ地域の場合、購入予定物件がたとえ現在満室でも空室になった際の空室期間が長くなると考えられます。

  • 駅から現地まで平坦か、急な坂道が無いか
  • 地図で見ると駅から近距離でも途中に急な坂がある場合は自転車や徒歩での移動が不便になり空室リスクが高くなります。

  • 電車やバスの時刻表、最終電車、最終バスの時間
  • 通勤時に使われる早朝、及び夜間の本数は多いか?

現地周辺の環境

  • 近隣の賃貸マンション、賃貸ビルの空室状況・募集状況
  • 同じエリアで空室が多い場合は、入居者確保に苦戦する可能性があります。近隣エリアの募集賃料と比べて安いか高いかも調べましょう。

  • 騒音や臭気
  • 大通り沿いや線路間近は騒音や振動や臭気がある可能性あり。海に近い場合はベランダにあるガス湯沸かし器やエアコン室外機、ベランダ手すりなど鉄製設備類の劣化が早くなります。ゴミ焼却場や汚泥処理施設などの嫌忌施設が近く無いか。

  • スーパー、コンビニ、銀行、病院などの生活施設
  • 地図やGoogleストリートビューと比べて、コンビニや生活施設が撤退している場合は過疎が進んでいる場合がありマイナス評価です。逆にコンビニや生活便利施設が新しくできている地域はプラスです。

  • 近隣施設
  • 近隣環境
  • 公園や児童館施設等が真横にある場合は、昼間に子供達の声が騒がしい可能性があります。逆に、子供の居る家庭には人気物件かも知れません。公園にトイレや水道設備がある場合は浮浪者が居座る可能性もあります。

  • 高度
  • 高台にある場合は、風が強く夏には涼しく、低地にある場合は風が弱く夏に暑くなります。

建物の外観、敷地

  • エントランス
  • 汚れや錆は無いか→汚れ、錆がある場合は値引き交渉として使えたり、また将来リニューアルすることにより空室率を改善可能です。

  • 外壁、内壁、床などにひびは無いか
  • 遠くから見て分からなくても、単眼鏡などで拡大してチェックすると、多くのひび割れが発生していることがあります。ひび割れが多数ある物件は、今は大丈夫でも、まもなく雨漏りが発生し、雨漏り修理のために多額の修理費用が発生する可能性があります。

  • 内廊下、外廊下のどちらであるか
  • 内廊下、外廊下のメリット・デメリットはこちらをご覧下さい。

  • 外廊下、階段、バルコニーなどの手すりや雨樋の材質と状況
  • 鉄製の場合数年毎の塗装が必要、ステンレスやアルミの場合はメンテナンス費用が安い

  • 屋上、屋根、ルーフバルコニーなどの防水加工の状況
  • 劣化具合をチェックして次の防水加工の時期を検討

  • 外壁がタイル張りの場合はシーリングの状況
  • 劣化している場合は雨漏りのリスクあり

  • 外壁
  • 隣地から50cm以上離れているか。出窓などが50cm以内に含まれる場合、隣地との書面による確認書がある場合があるので確認。

  • 鉄部の状況
  • 外階段や扉など、錆が発生している場合は塗装が必要

  • 自転車置き場
  • 敷地の境界線
  • 境界線の杭が存在するか、建物や塀や擁壁などの構造物が隣地へ越境していないか、隣地の建物等が越境されていないか。物置やエアコン室外機などの越境確認。

  • ルーフバルコニーの有無
  • ルーフバルコニーが多い物件は、5年~10年毎に行われるルーフバルコニーの防水工事代が負担になる可能性があります。

設備の状況

  • 消化器
  • 交換やメンテナンス時期。

  • 集合ポストや宅配ボックス
  • 給湯設備の設置時期
  • 15年程度経過すると全交換が必要

  • プロパンガスか、都市ガスか
  • 一般的に都市ガスの方がガス代が安く評価はプラス。プロパンガスの場合、業者によってガス料金が異なりますので業者名を調べ、できればガス料金設定も調べましょう。プロパンガスの場合、ガス業者を変更することにより、給湯設備一式を無料で交換してもらえる場合があります。

  • 地デジ対応状況
  • インターネット利用可能か
  • マンション向けインターネット設備がある場合は、インターネット接続装置が設置されている場所の確認、および接続業者との契約内容も確認しましょう。設備にかかる電気代は通常、NTTなどの接続業者からオーナーに支払われます。

  • 受水槽、貯水槽
  • 年1回以上の清掃が適切に行われているか。

  • ポンプ、加圧装置
  • 通常、15年程度で交換が必要になります。ポンプのメンテナンスが適切に行われているかどうか、ポンプ室内で漏水や吸水管廻りの腐食が無いかどうかも確認しましょう。ポンプの交換には100万円~150万円程度の費用がかかります。

  • エレベータ
  • 保守点検が適切に行われているか、設置から30~40年程度で交換が必要になります。

  • 保守点検費用
  • エレベータ、ポンプ等のメンテナンス費用の確認、受水槽の清掃にかかる費用の確認も行いましょう。

室内の状況

 この部屋に自分でも住みたいかどうか、賃貸募集する際のアピールポイント、NGポイントはどこか探してみましょう。

  • 天井高
  • 天井高が高いと賃貸付けに有利。

  • 室内の明るさ
  • 風通し
  • 床の状況
  • カーペットの場合、フローリングやCFへの交換を検討。

  • 流し、洗面台、鏡などの状況
  • 劣化している場合は交換が必要。

  • 床、天井、壁の状況
  • 音が漏れやすくないかどうか。一般的にRC造、S造、木造、の順に住環境は悪くなります。

  • 雨漏りチェック
  • 天井付近の壁紙が黒や茶色に変色している場合は、雨漏りが考えられます。外壁側の天井や、押し入れの中、出窓のコーキング劣化による雨漏り状況などをチェックしましょう。雨漏りが広範囲に及ぶ場合は、外壁タイルのシーリング交換+撥水加工や、屋上、ルーフバルコニーの防水加工が必要になり数十万~数百万円の工事費用がかかりますので決済時までの修理をお願いするか、または購入費用の減額交渉にも使えます。重要事項説明書で、過去の雨漏り有無状況を確認しましょう。

  • 水回りの臭気
  • 築年数が20年前後を超えると、排水パイプ内部の汚れにより臭気が発生することがありますが、通常は、排水口からトラップに水を注げば臭気の放散はなくなります。

  • 窓、バルコニーからの眺望
  • 室内火災報知器の設置状況
  • 消防法が改正され、すべての住宅に火災報知器の設置が義務付けられました。 新築住宅は平成18年6月1日から、既存住宅は各市町村条例により、平成20年6月1日~平成23年6月1日の間で設置義務化の期日が決められています。 既存住宅への火災報知器設置費用は1室あたり4500円前後です。

  • バストイレ
  • 最近では、ワンルームマンションでも、BT別が一般的です。ファミリータイプ間取りでは、お風呂に追い炊き機能があると○。

  • 間取り
  • 使いやすい間取りかどうか。最近人気の間取りかどうか。20年以上前は小さな部屋が多数ある2DK、3DKの間取り、DKが室内中央にある間取りが一般的でしたが、最近ではLDKが広く明るい場所にある間取りが一般的です。玄関ドアを開けてすぐに流し台が見える間取りは主婦に不人気です。玄関ドアを開けて部屋の中が丸見えの間取りは不人気です。

  • 収納の数と広さ
  • 壁の広さ
  • 昔の物件では、無駄に壁(壁紙の面積)が多い物件が存在します。壁紙が多いと、退室から新規募集までの室内リニューアル時に、壁紙張替のコストが高くなる可能性があります。

管理・清掃状況

  • ゴミ置き場
  • エントランスや廊下など、共有スペースの床やガラスの清掃状況
  • 集合郵便受け、掲示板、ゴミ箱
  • 敷地の除草(年4回程度)や草刈が適切に行われているか
  • 敷地内の樹木の剪定(年1回程度)が適切におこなわれているか
  • 駐輪場に、使われていない自転車が放置されたままになっていないか
  • 敷地内に粗大ゴミなどのゴミが放置されていないか
  • ペット飼育可能かどうか
  • 現在、ペット飼育不可の場合は将来ペット飼育可能とすることにより新たな賃貸需要を生める余地があります。

管理が良好に行われている物件には、優良な客が暮らしていることが想定されます。また、管理が適切に行われていない物件で、賃料が安かったり、または空室が多い場合は、物件購入後に適切な管理を行うことにより、物件価値を上げられる余地があります。

デジカメでありとあらゆる箇所を撮影しよう

現地調査を行う際に、周辺、建物外観(表、裏、側面も全て)、屋上、敷地境界、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場、庭、エントランス、階段、エレベータ、建物内、集合郵便受け、非常階段など、ありとあらゆる箇所を撮影しておきましょう。自宅に帰ってじっくりと物件詳細を検討したり、また物件購入後に不動産管理会社や各種工事業者さんとやりとりを行う際、そして、物件紹介ホームページを作成する際にも役立ちます。撮影箇所チェックリストは次の通りです。

  • 建物外観(表、裏、側面も全て)
  • 建物の表面だけでなく、側壁、バルコニー、裏、基礎なども。外壁の亀裂、クラック、補修跡など。側面は低い部分だけでなく、できれば上層階もしっかりと確認しましょう。タイルの割れや、目地、シーリングの状況。窓やドアの角付近にはクラックが発生しやすいので確認しましょう。

  • 屋上
  • 全体、及び立ち上がり箇所やシーリングの拡大写真も。上層階から見た各方向の敷地も撮影しておくと後ほど役立ちます。

  • エレベータ
  • 検査済み証(正しく更新されているか)。監視カメラ、監視カメラの装置が別室に設置されている場合はそちらも(監視カメラの更新、新設には30~50万円程度かかります)。油圧式エレベータなどの場合、エレベータの近くの別室に油圧装置が設置されている場合その室内や換気扇の状況。

  • 倉庫
  • ゴミ等が放置されていないか、雨漏りの跡が無いか。

  • 敷地境界
  • 境界杭、水道メーター位置(空き地に自転車置き場を設置する際など、メータ位置の移動には費用がかかります)。道路との段差(311震災で建物と地面の境目に段差ができている場合があります)。

  • 駐輪場・駐車場
  • 自転車の管理状況。

  • ゴミ置き場
  • ゴミ出し日などの張り紙も。

  • エントランス
  • 掲示板、集合郵便受け(集合郵便受けの交換工事発注時にも利用可能)、ゴミ箱など。

  • 階段・非常階段・廊下
  • 壁などに落書きやクラック等が無いか、歩いて全てを確認しましょう。外階段下部の防水塗装の様子、クラック等。鉄部の塗装状況も。塗装発注時に利用可能。階段下などに粗大ゴミが放置されていないか。共用灯が時間で自動ON/OFFされる場合、その設定パネル。火災報知器や消火栓、ホースなど(毎年点検が適切に行われているか)。

  • パイプスペース
  • 扉の塗装、錆び状況。扉を開けた内部状況。

  • 住居の玄関
  • 玄関扉塗装、錆び状況。取っ手や鍵穴の状況。チャイム、インターフォン、新聞受け。

  • 消火器
  • 全体本数が分かる写真、有効期限などの拡大写真(消火器交換時期を判断)。

  • ガス給湯器
  • 型番や、製造時期が分かる拡大写真も。交換時期を判断し、給湯器交換時に業者とのやりとりにも利用。

  • 各種鉄部の状況
  • 塗装時期を判断し、工事業者に発注する際にも利用。

  • コーキングの状況、窓のひび割れ状況(鉄線入りの窓ガラスは長期使用によりひび割れが発生します)。出窓や窓の隅付近の外壁に亀裂が無いか、防水工事後は無いか。

  • 庭・外構
  • 植栽の剪定状況、草や地面の状況。

  • 室内
  • 各室。柱、木枠(汚れ、カビ)。床。キッチン(交換時期を想定)。トイレ(広さや形、古さ、汚れ)。風呂場(ガス釜、カビ、バスタブ、蛇口、シャワー、給湯器リモコン)。エアコン。天井。カーテン回り。アンテナ端子(古い形のものは交換が必要)。インターフォン。

周辺環境は、建物の基本構造等と違い、設備の状況、管理・清掃状況については物件購入後に改善することができます。外観が汚く、管理の悪い物件を安く買い、改善することにより物件価値を向上することができます。